最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。

「えっ、あ、まだ」

「早くしろよ」

「うん」


多賀宮くんがちょっとイラついて見えるのは、私へのお礼なんか、さっさと済ませてしまいたいからだろう。


そうだよね。花山先生に言われてだし……。


授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り始める。


「じゃあ残りは来週。夏休み直前最後の授業になります。感想文を書いてもらうから、皆さんそのつもりでね」


石川先生はそう言って、視聴覚室を出て行った。


「感想文かぁ……」


思わずため息が出る。


何を隠そう、私は感想文というのが、昔から苦手だった。

自分が思うことを言葉にして、誰にもわかるように説明するというのが、難しい。自分の言葉だけで原稿用紙を埋める人は、本当にすごいと思う。


「見終わった後すぐに感想文なんて書ける気がしないよ」


そう泣き言を言うと、多賀宮くんがふと、思いついたように口にした。


「レンタルして、先に観れば」

「……あっ、その手があったか」

「これ、お礼にするか。よし、付き合ってやる」


私へのお礼なのに、多賀宮くんが決めてしまった。


しかも一緒にDVD観るって。

プラネタリウムとそう変わらない気がするんですけど……。

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