最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。
カナもカバンを持って私の机に駆け寄ってきた。
「行こうよ、久しぶりに」
「でっかい声出して歌ったらスッキリするだろ」
タケルがニシシと笑う。
「え、あの、今日は、ちょっと……」
「んー、なんか用事でもあるんか? 終わるまで待ってるぞ」
「終わるまで……って、それがその……」
どう説明したものかとしどろもどろになっていると、後ろの席の多賀宮くんが、ガタンと音を立てて立ち上がった。
「アミカ」
ちょっとぶっきらぼうな、でも甘い声。
ハッとして振り返ると、鞄を持った多賀宮くんが私を見下ろしている。
「俺と、行くの、行かないの?」
決断を迫るその目に見つめられた瞬間、私の心に火がともった。
それまでくすぶっていた心の中の火種に、ふうっと息を吹き込まれたような。あやふやで形を持っていなかった何かが、はっきりとした熱量を持って生まれたような気がした。
ああ、そうか。私、好きなんだ。
多賀宮くんが、好きなんだ。
なにを迷っていたんだろう。