最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。
確かに変だなとは思うけど、お母さんの機嫌がいいのは悪いことじゃない。
妙な不安をそうやって押し込めた。
それに今日はデートだし。
うっすらとだけ塗ったピンクリップ、変じゃないかな。大丈夫かな。
楽しみだけどその倍そわそわしてしまう。
そして約束の時間がきて。日曜日夕方の駅のホームは、外出帰りの家族や恋人同士でいっぱいで。
ここまで人が賑わっていると、私が多賀宮くんを見つけられても、彼が私を見つけるのは難しいんじゃないだろうかと、急に不安になった。
キョロキョロと周囲を見回していると、
「なにキョロキョロしてるんだよ」
背後から声をかけられ、振り返ると多賀宮くんが立っていた。
リネンの半袖シャツに、デニムだ。そしてスニーカー。
いつもの彼だけど、カッコイイ……。すごーく、カッコいい。