最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。
「よかった」
「なにが」
「見つけてもらえないような気がして」
ヘヘッと笑うと、多賀宮くんの手が伸びてきた。
ドキッとして思わず肩に力が入ったけど、彼はその手を普通に自分のあごに当てて、フムフムと品定めするように目を細めた。
「今日はあれだな……オメカシしてる」
「……うん、してる」
だってデートだもん。
多賀宮くんがそう思ってなくても、私の中では、デートだから。
変じゃないかな。いつもより少しくらい可愛く見えたらいいけど。
「いいじゃん」
そして多賀宮くんは、手首にはめたゴツくて大きい時計に目を落とす。
「行くか」
「え、あっ、うんっ」
今、いいじゃんって言ってくれた!
一気にテンションがあがる。
そうだ、拗ねたって仕方ない。今日は精いっぱい楽しもう。
私は力強くうなずいた。