Princess
彼は訳がわからないと言う顔をした。

「あたし、実家が会社を経営しているんです。

会社って言っても小さいものなんですけれども…その会社が不景気の影響で傾きそうになってて、でも祖父の代から経営している会社を潰す訳にはいかないと言うことになって」

チラリと彼の顔に視線を向けたら、
「続けて」

彼が続きを促してきた。

「それで会社のために、大きな会社を経営している社長の息子って言う人と娘であるあたしを結婚――いわゆる、政略結婚ってヤツなんですけどわかりますか?」

「吉本新喜劇のネタとしてよく使われる?」

「それが嫌だったから、家出したんです。

顔はおろか名前も知らない、そのうえ会社のためにその人と愛がない結婚をするのが嫌で…」

「なるほどね」

彼は納得したと言うように首を縦に振ってうなずいた。
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