最後の100日~君に幸あれ~
ふと奥村さんの声が聞こえた気がした。
奥村さんのことを考えていたからかもしれない。
俺は周りへ目を移すと隣の席には奥村さんの姿があった。
休日に会えるのが素直に嬉しかった。
だけど、一緒の席に座っている男がいた。
彼氏か?お兄さん?
金髪でチェーンピアスが付いている。
口元にもピアスがあった。
関西で喋る男は彼女のことを"ミイちゃん"と呼んでいた。
奥村さんは慌てたように関西にいた頃の友人と教えてくれたが、隣の男、花宮洸季の目は違った。
この男奥村さんのことが…。
そう直感した。
感っていうのか?
その場にいるのが嫌になり俺はすぐそのカフェを出た。
「あれ、祐一?
何でてきてんの。
中で話そうよ」
遅刻した拓磨が中へ入ろうと俺の腕を引っ張る。
「お前遅いよ。
お前が言い出したのに。
てか、カフェなら他でもいいだろ。」
少し強い言い方をしてしまった。
奥村さんと仲のいい男を目にして苛立っていた。
嫉妬ってやつだと思う。
「ごめんごめん。
ちょっとあるとこに寄ってきて。
そんなに怒んなよ。
んじゃ、何処にする?別にカフェじゃなくてもいいんだけどさ。
あと、お前を連れて行きたいとこがあんだよ」
「いや…ごめん。
ちょっと苛立ってただけ。
奥村さんに会ったよ。
何処でもいいんだったら家でも良いじゃねぇか。」
「いや、お前の家弟居るじゃん?
聞かれたくなかったんだよ。
奥村さんに会ったんだ。
良かったじゃん、なんでそれで苛立ってるわけ?」
確かに弟がいる。
今年で7歳になる。
拓磨のことを気に入ってて家に来るといつもベッタリだしな…。
「奥村さんデートしてた。
それだけ。
んで、何処行くんだ。」
「あ〜。
嫉妬ってやつね?
んじゃ、隣駅のカフェにする?
連れて行きたいとこ隣町だし。」
嫉妬って…まぁ、そうだけど。
拓磨の言葉に頷き駅の改札まで歩いた。