最後の100日~君に幸あれ~
「あの日なんで私をあそこに連れて行ったの?
ルウがそうしてほしいって、変わったお父さんを見てほしいって願ったの?」
「っ!」
ルイは驚いた様子で私の顔を見てそして、私に背を向けてしまった。
私は背を向けたルイのそばに行きルイの横顔を見つめた。
「一年目は毎日花をあげて、お線香をあげていた。
二年目は月に四度花をあげて、お線香をあげていた。
そして、その度に泣いて謝っていた。
『ルウ…ごめんなさい。
取り返しのつかないことをした。
波瑠や美奈を傷つけてしまった。』
って泣きながら…それを見ていて思ったんだ。
この人は心の底から自分のしたことを悔いて、悲しんでいるって。
だから、美奈にもお父さんと和解してほしい。
たった一人の血の繋がった親子なんだから、親が離婚したとしてもその縁は切れない。
人はよく間違いをする、あの人はその間違えが暴力に変わって美奈と美奈のお母さんを傷つけたんだって。
美奈と美奈のお母さんを傷つけたことは消えないし、美奈の心の中にずっとある。
でも、人は変われる。
昔のような優しい人に変われるんだって思った。
だから、美奈に会ってほしい。
会って今までの全てを謝って欲しい。
あの人が居なかったら僕は美奈に出会えなかったから。
公園のベンチの下で静かに助けを求めて居た僕を助けてくれた人だから…」
私は無言のままルイの顔を見た。
どこか遠くを見ている様子だった。
まるでルイがルウのような感覚に襲われる。
「って、ルウが言ってたよ」
ルイがそう付け足してくれた。
そうだよね。ルイがルウな訳がない。
「美奈。
人は間違いをする。
それは一回か、二回。それ以上かもしれない。
だけど、間違っていいんだよ。
沢山間違って、沢山悩んでそしてその度に変わればいいんだよ。
確かに人を傷つけるのはいけない。
だけど、その後に自分のしたことにどれだけ罪悪感を持てるかが問題なのかもしれない。
美奈のお父さんが美奈達と別れて暮らすようになってからも変わらず、罪悪感なんて微塵も感じない人だったら美奈に会わせたりなんかしなかったよ。」
そっか…。
お父さんは少しダメな間違い方をしてしまったんだ。