最後の100日~君に幸あれ~
「ルイっ!!!」
「えっ?美奈。どうして?」
いつものように手すりからどこか遠くを見ていたルイは振り向いた。
私が来るとは思わなかったとでも言いそうなくらい驚いた顔で私を見る。
「ルイ、消えるなんて嘘だよね?
二階堂君の冗談だよね??」
「美奈はそれを信じたからここに来てくれたんだね?
本当だよ…。12時になれば僕は消える。」
いつものような優しく微笑まないで。
嫌だよ。
昨日ずっと一緒にいるって言ったじゃん。消えないって言ったじゃん…。
私の瞳からは、次々と大粒の涙が溢れていた。
後ろから祐君と二階堂君の声が聞こえた。
「拓磨君酷いよ。
言わないでってお願いしたじゃん」
「うるせぇ!
俺みたいな後悔する別れ方をして欲しくなかったんだよ」
二階堂君は知っていたんだ。
だから、昨日私とルイを話させてくれたの?
「拓磨君…ありがとう。
もう、美奈は僕と別れる時は泣くんだね。
あの時も泣いていた。
だから、会わないまま行こうと思ったのに」
「俺見えてないんだけど。
前話してたルイって人がいるの?」
祐君には見えていない。だから、ルイが何を言っているのかもわからない。
私は言葉を言えずただ泣いていた。
「沢田祐一君だっけ?
拓磨君。美奈の事幸せにしてあげてください。って言ってるって伝えてくれるかな?」
二階堂君は祐一君へルイが言っている言葉を伝えた。
「頼まれなくても幸せにしますよ!」
そう言い、祐君は私の背中を優しくさすってくれる。
ルイはそれを見て本当に幸せそうな顔でフニャっと笑った。
「美奈。
こうやって見つけてくれてありがと。
最後にもう一度、一目だけでいいから美奈を見たかった。
これで僕はあっちに行けるよ。
ちゃんと幸せにならなきゃ怒るからね?」
「ルイ…っ!やだよ。
幸せになるから行かないで…っ」
「それはできないんだ。
ごめんね。美奈。消えないなんて嘘ついちゃって。
僕は美奈と過ごした日々を忘れないよ。
本当にありがとう…。」
ルイの体が少し光った。
そして、目の前には一匹の猫がいた。
「ル…ウ…?」
「そうだよ。
黙っててごめんね。
僕を見つけてくれて、愛してくれてありがとう…。
美奈、最後は笑顔でサヨナラしよう?」
本当はもっと前に分かっていたかもしれない。
ルイが本当はルウだって、心のどこかで気づいていたかもしれない。
「ルウ…。ありがとう。
ありがとうっ!!ルウ!!!」
そう言い私は無理やり笑顔を作った。
涙で顔がグシャグシャで笑顔と呼べないけど、確かに私はルウと笑顔でサヨナラをしたんだ。
ルウの姿が見えなくなった。
私は崩れ落ちただ泣いた。
ルウだったんだ。
本当はルウが私の元へ来て私を変えてくれたんだ。
ルウ…ありがとう。