だから私は、明日のきみを描く
「……彼方くんと、仲良くなったの?」


ひょっこりと顔を覗かせた遥を見た瞬間、氷水が降ってきたような気持ちになった。

衝撃のあまり、うまく呼吸ができなくて、声が出せない。


「なんか、前よりも親しげにしゃべってた気がしたから」


遥の表情には、いつものとの違いは読み取れなかった。

ただ、不思議に思ったから訊ねているだけ、という感じに見えた。


「……ええと、たまたま、夏休みの部活のときに、彼方くんが私の絵を見て……あの、文化祭用の」

「へえ、そうなんだ。だから絵は順調? って言ってたんだね」

「う、うん。ほんと、それだけ」


最後の一言は余計だったかもしれない、と思ったけれど、遥はあまり気にしていないようだった。


「ねえ、それにしてもさ、さっきの彼方くん、かっこよかったね」


遥がふふっと笑う。

私も頑張って同じように笑みを浮かべた。


「なんかさ、彼方くんって、正義感っていうか、冷静に正しい判断ができるっていうか、すごいよね」

「あ、うん、そうかもね」

「なんか大人だよねー、落ち着いてるし。かっこいいなあ」

「………」


変な答えをするわけにもいかず、私は黙って遥の言葉を聞いていることしかできなかった。


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