だから私は、明日のきみを描く







美術室は、あまり使われていない旧館の一階の端にある。


近づくにつれてひと気がなくなり、放課後の喧騒も、野球部の掛け声も、体育館のボールの音も遠ざかっていく。


静寂に包まれた旧館に入ると、いつもふっと肩の力が抜ける気がした。

学校の中で唯一、素のままの私でいられる場所だ。


美術室に入ると、三年の中原先輩、二年の深川先輩と三田先輩、一年の吉野さんがいた。


いつものメンバーだ。

美術部は、顧問の先生は経験がないので名前だけという感じで、部活を見に来ることはほとんどないので、部員もどんどん幽霊部員になっていって、今は五人しか活動していないのだ。


「望月さん、こんにちは」


黒板の前で本を読んでいた中原先輩だけが振り向いて声をかけてくれた。

これもいつものことだ。彼女はしっかり者の女の先輩で、部長をしている。

絵は描かずに本ばかり読んでいる不思議な人だ。

私は笑って「こんにちは」と返した。


いつものことながら、他の三人は無反応だ。


二年の深川先輩は男の先輩で、絵がものすごく上手いけれど、無口でいつも黙々と絵を描いているだけなので、話したことはほとんどない。

三田先輩は男の先輩で、すごく大人しい人。絵はあまり描かなくて、ほとんどずっとイヤホンをして音楽を聴くかゲームをしている。

吉野さんはうつむきがちであまり人と目を合わさないようにしているので、私も話しかけないようにしている。いつも漫画やイラストに没頭していた。


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