だから私は、明日のきみを描く
部員同士のつながりがほとんどない部活だけれど、それが逆に気を使わなくてすむので気楽だ。

だから、美術室はとても居心地がいい。


私はいつもの定位置の席に荷物を置き、棚に置いてあった描きかけのキャンバスと絵具の一式を机の上に持ってきた。


この席を選ぶ理由は、すぐ左に窓があって、外が見えるからだ。

正確には、旧館に隣接したグラウンドがすぐ側にあるから。


ここからなら、陸上部が練習している場所がはっきり見える。


私は椅子に座り、キャンバスを立てた。

パレットに絵の具をのせようとしたけれど、手が止まり、無意識に窓の外に目を向ける。


ほんの数メートル先に、棒高跳びのバーがあった。

そして、彼方くんが助走をしている。


どきりと胸が高鳴った。

また見てしまった、と頭では思ったけれど、私の目は言うことを聞いてくれない。

どうしても彼の姿を追ってしまう。


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