だから私は、明日のきみを描く
驚いた。

彼方くんは前のほうの席にいて、チャイムが鳴ってすぐに教材をもって腰をあげたので、もう自分のクラスに戻ったものだと思っていた。


まさかまだC組にいたなんて。

しかも私の後ろにいたなんて。


向こうにいる遥が私たちのほうを見ているのが視界に入って、焦りが生まれた。


「……あ、こんにちは」


動揺のあまり、震える声でとりあえず挨拶をしてみる。

彼方くんはにこにこしたまま、「絵は順調?」と訊ねてきた。


私は声を出せずになんとかこくりと頷く。


すると、彼方くんの後ろに立っていたA組の男子が「絵?」と声をあげた。

先生には怒られない程度に茶色く染めた髪をつんつんに立てて、シャツのボタンを第二まで開けてズボンは腰で履いている、私には少し苦手なタイプだった。


「なに、彼方。絵って言った?」

「あ、うん。この子、美術部でさ」


彼方くんが説明するように私を軽く指で差した。

すると茶髪の男子が嫌そうに顔をしかめる。


「は? 美術部? お前、なんでそんな地味なのと知り合いなの? オタクの巣窟じゃん美術部とか」


周りにいた数人の男子もくすくすと笑った。


かっと顔に血が昇る。

地味だとか、オタクだとか、言われ慣れているし自覚もしているから、それが嫌なわけじゃない。

でも、みんなの前でからかいの種になったのが恥ずかしかった。


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