kaleidoscope~snow white's pearl tears~
六花の体調は良くなくて、最近では寝込んでしまうことも多くなった。
薬の種類も増えていって、六花が麓の街に降りることは殆どなくなってしまった。




薬も、薬売りの人がわざわざ訪ねてきてくれているから今は買えているけど、六花がお仕事出来ないことも多いから、薬を買うお金もなくなりそうなのだ。




薬売りの人はすごく優しくしてくれて、お金は六花が元気になってからで良いよと言ってくれるけど、薬売りの人だってあたし達がお金を渡さないと生きていくのもやっとだろうに、笑顔を見せてくれる薬売りの人に、涙した日もあった。




「ではこれを飲ませてあげてくださいね」
「いつもありがとう。これお金」
「いつも言っているでしょう。六花くんが元気になってからで構いませんと。貴女は森の外に出られないようですし」




最近麓で人気のパン屋のパンなんですけどね、とあたしの差し出すお金を受け取ることもせずに語り出す薬売り。
そのパン屋は知っているわ。
六花が新しいパン屋が出来たって嬉しそうに言っていたもの。





「木苺ばかりでは栄誉が偏りますから、ちゃんと食べてくださいね」




スープも置いておきますね、と鍋をキッチンに置いてなんだか嬉しそうに帰っていった薬売りにため息をひとつ吐き、スープの入った鍋に目を向ける。




鍋ごと捨てなきゃダメかなとか、食べ物に申し訳ないことを考えたけれど、空腹には勝てずに、恐る恐るお椀にスープをよそう。
毒物の臭いはないけれど、大丈夫かしら?





「……おいしい」





すべてを疑う前に信じることも大事なのだと学んだその日、六花が高熱を出してベッドに縫い付けられることになった。




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