kaleidoscope~snow white's pearl tears~
慌てて薬売りを呼び出して、医者を連れてきてもらった。
ただの風邪とはいえ、体調を崩していた六花はとてもつらそうだった。




「もう難しいかもしれないね。怖いかもしれないけれど、森から出てみない?」
「え?」
「六花くんを助けるためだよ」




六花を助けるため?
それなら、と手を伸ばしかけてふと振り向く。




辛そうに胸を上下させ、それでも森を出るなと怒る六花。
身体、つらいでしょ?
無理しなくたって良いのに。
辛いって言いなさいよ馬鹿!





「この間持ってきたパン屋さんが働き手を探していました。六花くんの薬代だけじゃなく、貴女が自分の趣味にかけるお金も少しくらいなら、と。悪くない契約だと思いますよ」
「そうね」
「さぁそうと決まれば行きますよ」





まだやるとも言っていないあたしの腕を強引に引き、六花から引き離す薬売り。
これが目当てであたし達に優しくしたのね。
働き口として紹介するのもパン屋じゃなくてもっと酷いところなんでしょ。





「六花、六花ぁ!」
「煩いですねぇ。ほら、少し眠っててくださいねお姫様」





六花の声が遠くに聞こえて、温かさに目を閉じた。
ふわふわとした思考のなか、必死にあたしを呼ぶ六花の声だけが木霊してる。





それでも森を出るきっかけを掴めたこと、本当はすごく嬉しいんだよ。
これでやっと六花の役に立てる。
六花のためならなんだって出来るんだから!





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