王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

(いいえ、私はスタニスラバの王女なのよ。私がしっかりしなくては)

ラナは自分を奮い立たせる。

エドワードたちの話では、バルバーニがラナを狙う理由は、その先にスタニスラバ王国との接触を望んでいるからだとのことだった。

オーロ海に浮かぶ強国の王立海軍は未だ謎に秘められ、世界最強と謳われている。

強い陸軍を持ち、戦争を好むバルバーニなら、その力を利用したいと思うだろう。

彼女がここで下を向いて泣いていたら、母国はあっという間に不利な状況に追い込まれてしまうかもしれないのだ。

ラナは両手首を後ろでに縛られたまま、手のひらをギュッと握った。

シャンと背筋を伸ばして胸を張り、王女らしい威厳を持って男を見据える。


「それでは隊商のマクシム。スタニスラバの王女として、あなたに依頼をします。今は手元に金貨がないから、報酬としてこの首飾りを差し上げるわ」

「なんなりと、王女様」


マクシムは胸に片手を当て、大仰な身振りで礼をした。

ラナは覚悟を決めてすっと息を吸い込む。

エドワードの庇護下を出てきてしまった今、これからナバやスタニスラバやラナ自身がどうなるのかは、すべて彼女にかかっている。


「あなたたちと皇帝の取引の対象は、この私の身柄だけね。国境付近へ着いたら、私の侍女を解放しなさい。そして彼女が安全に王都へ帰れるように手配するのよ」

「お安い御用でさあ。俺たちは商人であって、悪人じゃないんだぜ」


彼はそう言って請け負うと、すぐにキティの手足を縛っていたロープを解いた。

もともと侍女をバルバーニへ連れて行っても仕方がなかったし、そのまま引き渡してしまうと冷酷な皇帝に彼女がどんな目に合わさせるかわからなかったので、適当なところで降ろしてやるつもりではいたのだ。
< 111 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop