王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

一夫多妻制が認められ、ほとんどの貴族男性は側室を持っている。

強い者が尊敬され、誰よりも偉い。

それはそのまま国の主権を握る皇位にも適応され、皇帝になる者を決めるのはその血の正統性ではなく、どれだけ相手の血を流させることができるかだ。

バルバーニにおいて戦士はなによりも畏怖される存在だったので、市街地には陸軍兵士のためだけの娯楽施設や飲食店や、男たちが腕試しをする闘技場もあった。

(とっても興味深い国ね。ここに住む男性たちは、みんな幸せなのかしら)

ラナは流れ行く景色を見ながら思う。

エドワードは彼女に、ただ従順であることなど決して望まなかった。

それどころか、ラナが牙をむき出しに彼に歯向かっていくのを、どこか嬉しそうに笑ってやり返してくるのだ。

この帝国の男性はきっと誰も、エドワードのようには笑わないのだろうとラナは思った。






皇城へ到着したラナは、手始めにドレスを着替えさせられた。

ヴェールを被った侍女たちに取り囲まれ、問答無用でナバの衣装を剥ぎ取られていく。

彼女に新しく与えられたのは上下を切り分けたようなデザインのローブで、上が赤で下は黒だった。

開いた襟に付けたレースも漆黒で、肌の露出は比較的多い。

中に着たボディスやペティコートも薄手で肌寒かった。

自分を艶やかに見せるのは帝国の貴族女性にのみ許されたことで、女性は知恵をつけることを望まれない代わりに己を飾り立て美しさを磨き、より強い男に見初められることを目標にしている。

ラナは四角く開いた胸元がなんだか心許なかったので、気休め程度ではあるものの、キティが首飾りを残してくれてよかったと思った。
< 116 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop