王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
けれど同時にこの姫君がちゃんと腕の中に帰ってきたことに安堵し、ラナの頭のてっぺんにキスを落とす。
ここで巡り会えてよかった。
愛しい娘をアルベルトに殺されてしまうのではないかと思ったときほど、怒りと焦りに心を乱されたことはなかった。
エドワードが今こうしてラナを抱きしめることができるのは、彼女が希望を捨てずにいてくれたからに違いない。
きっと、これまでに経験したことのないような恐ろしさにひとりで耐えたのだろう。
エドワードは震えながら泣き続けるラナをしっかりと安心させてやりたくて、恐怖に強張った身体を少しずつ解すように、額やこめかみや髪にキスをし、ゆっくりと顔を上げさせる。
そして涙に濡れた頬に唇を寄せると、最後にしっかりと互いのそれを合わせて、長い長い口づけを交わした。
離れていた時間の不安と恐ろしさを埋めるにはそれだけではちっとも足りなかったけれど、エドワードはどうしてもラナにかけてやりたい言葉を閃いたので、鼻先の触れる距離で波打つ海の色の瞳を見つめて言った。
「ラナ。よくがんばったな」
彼にしてはなかなかいい出来ではあったが、ラナがその言葉に更に涙を溢れさせたので、エドワードはもうなにも言わず、彼女が落ち着くまで絶対に抱きしめた腕を解かないことにした。
しばらくしてラナがようやく泣き止んだ頃、洞窟の中にふたりの男が入ってきた。
エドワードの隣にぴったりとくっついて座っていたラナは、びくりと震えて顔を上げる。
絶対的に頼れる者の側にいると虚勢を張る必要がなかったので、彼女の反応はうんと素直だった。
彼女たちに近寄ってきた男のうち、ひとりは王子の側近であるライアンだ。