王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

しかしもうひとりのほうが問題である。

その男は赤いチュニックに黒のブリーチズという格好をし、背中にはバルバーニの陸軍兵士であることを示す深紅のマントを被っていたので、ラナは悲鳴を上げてエドワードのマントの中に隠れた。


「いやっ!」


エドワードは子ウサギのように震えるしおらしいラナを心の内で非常に愛らしく思いつつ、深紅のマントの男を睨み上げる。


「ロロ、貴様。まさか俺の婚約者になにかしたのではないだろうな」


ロロと呼ばれた男は、なんだか見てはいけないものを目にしたかのように、とても苦そうな顔をした。

これが本当にあの、社交界の乙女たちになど見向きもせず、ナバの火竜と恐れられた苛烈な騎士の王太子であろうか。

ライアンがやれやれと首を振り、エドワードのマントの下で怯えているラナに声をかける。


「ラナ様、ご安心ください。彼は私たちの騎士団時代の同僚で、ロロといいます。4年前から間諜としてバルバーニに潜入している、ロイヤル・ナバの騎士でございますよ」


ラナはエドワードの胸の中に身体を預けたまま、マントの合わせから顔だけをひょっこりと覗かせた。

さっきは逆光だったこともありまったく気がつかなかったが、落ち着いてその男を見てみると、彼は赤みがかったダークブロンドの髪に琥珀色の瞳を持っていることがわかる。


「あっ、あなたは……! あのとき、皇子から私を救ってくれた方ね」


ついでに言えば隊商のラクダに乗っていた彼女を見逃してくれたのもロロだったが、ラナはまだそのことを知らなかった。


「覚えていてくださって恐悦です、王女殿下。ようやくのご挨拶となりますこと、どうかお許しください」


ロロはバルバーニ兵士の指定のベレー帽を脱ぎ、王立騎士団の者たちがする仕草で王太子妃となる女性に敬礼をとった。
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