王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「ラナ、俺はお前を絶対に他の誰にも渡しはしない。必ず迎えに行く。お前は姫君らしく俺を待っていてくれるだけでいい。だから、どうか俺を信じてくれないか」
エドワードの声は悔しさで微かに震えていて、彼がもしもただの男であったなら、たぶんここでラナを手放したりはしなかっただろう。
けれど彼らには一国の王子と王女として、国と民を守る義務がある。
ラナはそれが怖くないわけではなかったが、今度はエドワードのほうが不安に怯えているようだったので、思った以上にすんなりと引き受けられた。
最初に攫われたときは、彼とはもう二度と会えぬ覚悟の道だった。
けれど次は違う。
エドワードが必ず迎えに来ると約束してくれるのだから、きっとそうなるだろう。
そう信じることを許されるだけで、ラナは何度でも強く立ち上がることができた。
ラナが王子の胸の中でしっかりと頷くと、エドワードは彼女の顔を覗き込み、小さな鼻に誓いのキスを落として言った。
「愛している。お前を、この世界の他の誰よりも。ラナが一緒にいてくれさえすれば、俺はこの先お前以外のものなどなにも望まない」
抱きしめられたままこの告白を真正面で受け止めたラナは、翡翠色の目と見つめ合っているうちに頬がぐんぐん熱を上げ、ついに堪えきれなくなって顔を伏せた。
「こら、なぜ目を逸らす」
真っ赤な顔をして俯くラナを、エドワードがすかさず追いかける。
ラナは蚊の鳴くような声で答えた。
「は、恥ずかしいのです。エドワード様のことが、と、とっても、好きだなって思ってしまったから……」
あの冷たい塔の部屋でなにもかもを失ったと思ったとき、それでも彼への思いを捨てきれないほど、自分がこの男を好きになっていたのだと思い知った。
「俺が好きなら顔を見せろ」
エドワードが無理に目を合わせようとするので、ラナは首を捻って逃げる。