王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「見ないでください」
「俺に命令するな」
エドワードはラナの熱い頬を強引に両手で挟み込んでグイッと上を向かせ、火照った顔で困ったように眉を下げた彼女を見て息を飲んだ。
「参ったな。かわいい」
これを大真面目に呟き、気の赴くままに言う。
「お前も俺を愛していると言ってみたまえ」
「嫌です。お、お手紙の中でもう言いましたもの」
たしかにラナは、親愛なる者に宛てる定型文的にそれを綴った。
しかしエドワードはそんなことでは満足しない。
「あんなのは言ったうちに入るか! だいたいあれはキティの字だろう!」
言うまで離してくれる気配がないので、ラナは観念して仕方なく囁いた。
「す、好きです。お慕いしております」
エドワードは口元にイジワルな笑みを浮かべる。
「それから?」
ラナはしばらく逡巡し、しかしそれはどうしようもない事実だったので、正直に白状した。
「愛しています。世界中の誰よりも」
この世で一番の幸せな男といった顔をしたエドワードが、ラナを思い切り抱きしめる。
この世で一番の不憫な友人といった顔をしたライアンは、こめかみを押さえてため息を吐いた。
「殿下、いい加減終わりにしていただいてもよろしいですか。痒い会話聞かされるこっちの身にもなりやがれってんだよ」