王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

ライアンが真剣な表情で受け取った資料を読み込み、低い声で唸る。


「王女殿下、これは役に立つどころではありません。我々が必死になって得ようとしていたものですよ」


そう言って、ラナが隠し持っていた紙の束から1枚を抜き出して差し出した。

彼女はキョトンとして目を瞬く。


「あら。あのとき皇帝がサインをした契約書ね」


なんとラナが拾った中の1枚は、アルベルトの直筆サイン入りの取引成立の証明書だった。

彼があのときサインを求められたのは2枚で、こちらは武器の売買についてのものだ。

麻薬を運んで報酬を得たことの証明書は、あの海賊たちが持っていった。

しかし彼らが密輸入した南の大陸の葉の種類が一覧になっている資料の一部も混ざっているので、これは重要な証拠になる。

あとは海賊が所持しているもうひとつのサイン入りの証明書さえ手に入れば、皇帝はこの取引に関してどうあっても言い逃れはできないだろう。

エドワードが妻をぎゅっと抱き寄せた。


「お前はなんて素晴らしい王女なんだ!」

「俺が4年かけてもお目にかかれなかったものを、たったのひと晩で……」


なんとなく諸手を挙げて喜べないのは間諜のロロである。

この数日で様々なことを経験していたラナはこれがどれほど奇跡に近い出来事かあまりよくわからなくなってしまっていたので、それよりもずっと気になっていたことをエドワードに訊ねた。
< 150 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop