王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「あの、キティは無事に王都へ辿り着けたのですね? ルザの怪我は大丈夫ですか?」
「ああ、もちろん。ふたりともピンピンしているさ。俺たちと一緒にバルバーニへ潜入したいと言って聞かなかったくらいだ。お前のあの書簡も、早速使わせてもらった」
「そうですか。よかった」
ラナは彼女がしたいくつかの判断は間違いではなかったことがわかり、少しだけホッとして胸を撫で下ろした。
それからすぐに陸軍兵のロロがエドワードとライアンを連れ、峡谷で捕らえた黄金の髪の王女をバルバーニ軍にもたらした。
ラナは洞窟で彼女を発見したという兵士に抱かれて馬に乗り、必死に逃げ出した皇都へ戻ってきてしまった。
あまり覚えのない顔の男なのできっとこの功績は高く評価されるだろうと、王女を腕に捕らえて誇らしげな彼の後ろに続く周りの兵士たちは思っていた。
王女は怪しまれないためにエドワードによって両手を背中で縛られてはいたものの、彼はラナが痛くないように随分気を使ってくれたので、無理やり拘束されたときに比べると動きやすかったし、恐怖も少なかった。
夜空に星が輝く頃に城壁門へ辿り着くと、そこでは不愉快そうに顔を歪ませたフベルトスが待ち構えていた。
ラナは彼に力づくで押さえつけられたときの恐ろしさだけは忘れられなかったので、反射的に身体を強張らせる。
フベルトスが彼女にしたことをロロからこっそり伝え聞いていたエドワードは、怒りに燃える双眸をそっと伏せ、深紅のマントの中でラナを密かにぎゅっと抱きしめた。