王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
そして皇子の前で馬を止め、ラナを抱えたまま飛び降りると、彼女の側を離れる際に耳元で低く囁く。
「忘れるな。お前は俺のものだ」
ラナがハッとして微かに頷いた。
それはもはやラナを腹立たせる言葉ではなく、彼女に勇気を与える魔法の呪文だ。
フベルトスは妻にしようと定めた女にこんな屈辱を受けたのは生まれて初めてだったので、なんとしてでもスタニスラバの王女を屈服させなければ気が済まなくなっていた。
父が愛用しているものと同じ種類の銃を手に取ると、銃口をラナに向ける。
銃身の先を彼女の顎先に引っ掛け、そのまま軽く持ち上げた。
ラナの喉が無防備に晒される。
フベルトスは片目を細めて彼女に迫った。
「選ばせてやる。ここでその白い喉を撃ち抜かれるか、俺への忠誠を誓うキスをするか。きみに与えられた選択は死か、永遠の服従だ」
下がったところで兵士たちに混じってこれを見守っていたエドワードは、つい激情に駆られて飛び出しそうになった。
隣にいたライアンが慌てて彼の爪先を踏みつけ、激怒して震えるエドワードを思い留まらせる。
ロロが4年かけて築いた信頼と王女確保の興奮のおかげでなんとか兵士として紛れこむことができているが、エドワードが自らラナを抱いて送り届けたことだってかなりの危ない賭けだった。
これ以上目立つ真似は決してできない。
銃口を向けられたラナは、フベルトスが不気味に思うほど静かだった。
彼女はこのような娘だっただろうか。