王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
手紙はたったの3行で、エドワードが彼女から得た力を使って今海に出ているということと、彼がラナを愛しているということが綴られていた。
「殿下がお側におられない間、私が代わってお守りいたします。どうか彼を信じてお待ちになってください」
ラナは一度ドアをコツンと叩くことでそれに答えた。
誰かに見咎められてしまってはいけないので、ロロはそれから一切口を開かなかった。
■2■
バルバーニ帝国らしい薄い青空の広がった日だった。
渇いた砂の大地には、乾燥した風と潮の香りが漂っている。
いくつもの小国が加盟するこの帝国を結びつけているのは、かつてこの地を剣一本で統一した伝説の戦士の存在である。
貧しい平民の出身だったその男は、一代限りでバルバーニ帝国を築き上げ、そしてそれを一代限りで手放した。
何人たりとも、己以外に縛られてはいけない。
強さとは、財産や身分に囚われない、最も気高き自由である。
それがその戦士の誇りであり、彼の意思を継ごうという男たちが競って強さを求め、最後に得る自由の象徴がすべての人の上に立つ一国の王位だ。
そしてその中でも最も力を持つ者が任命されるのが、バルバーニ帝国の皇帝だった。
若い者も老いた者も、男でも女でも、裕福でも貧乏でも、強さだけが己自身の意思と力で示される。
この信念を元につながりあっているのが、かつての伝説の戦士が統一したバルバーニという帝国なのだ。