王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「そうして着飾るとやはりきみは見栄えがするね。これからは毎日きちんと侍女に手間をかけさせ、俺のために美しさを磨くといい」
フベルトスはラナの耳元に囁いたが、彼女は返事をしなかった。
それでも今夜の彼はどこか不気味なほど上機嫌だ。
フベルトスには妻が10人もいるというのに、なぜわざわざラナを連れて回るのかと、彼女は不思議に思った。
しかし会場でフベルトスとラナに行き合った者たちが皆ふたりにさりげない祝いの言葉を述べ、贈り物がどうとかという話をするので、ラナにもだんだん皇子の考えが読めてくる。
身分を隠した仮面舞踏会でその私事に関わる話題はご法度だから、誰も声を大きくしては言わない。
しかし見る者にはそれがスタニスラバの王女であるということは絶対にわかることだったし、各国の王女を次々と側室に迎えるフベルトスが伴っている新たな異国の王女とあれば、皆が考えることはひとつだった。
ラナがそれに気がついたことを察すると、フベルトスは愉快そうに囁く。
「わかったかな。これはきみと俺の結婚のお披露目会でもあるんだ。舞踏会の最後には、皇帝がきちんと正式な声明を出してくれるからね。そしてきみはそのまま俺の寝室へ連れて行かれる。エディ・バロンより先に俺と結婚してしまったら、きみはナバの王太子妃にはなれないね」
彼はもはや、意地になってラナを手に入れようとしている。
ラナは決して表情には出さなかったが、心の内ではひどく動揺していた。
彼女はエドワードを信じて待つと決めている。