王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
けれどもし、本当にフベルトスの言う通りになってしまったら手遅れだ。
当然ナバでは重婚を認めていないし、無理やりだろうと一度フベルトスと結婚させられてしまったら、バルバーニ帝国の皇帝が認めない限り離婚も不可能。
フベルトスもそれを知っているから、今夜はこんなに余裕たっぷりだったのだ。
「言っただろ? きみは俺の物さ。もう逃げられない。今夜を迎えた時点で、エディ・バロンの俺への敗北が決まったんだ」
ラナはそれに言い返してやりたかったが、エドワードが今この国にいることを知られてはいけないし、彼女は姫君らしく彼を待つと約束しているので、決して口を開かなかった。
しかし一番は、なんと言い返していいのかわからないというのも、揺るぎのない事実であった。
仮面舞踏会の盛り上がりが頂点に差し掛かると、ホールの真ん中で隊列を作ってダンスを踊るのが恒例行事である。
ラナは全然そんな気分ではなかったのに、勝ち誇ったフベルトスに押しやられてその中で一緒に踊ることになってしまった。
彼はようやく手に入れることが叶う美しく高潔なプラチナブロンドの娘を、他国の貴族に自慢したくて仕方がないのだ。
ラナが隊列の中に組み込まれると、それからすぐに音楽が流れ始めた。
皆が一斉にステップを踏む。
妖しげな仮面舞踏会には似合わぬ軽やかなリズムで、誰とも知らぬ相手と手を合わせ、ときに近づいて身体を触れ合わせて、くるくると位置を入れ替わってまた別の誰かとペアになった。