王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

バズはエドワードよりいくらか年が若かったが、長い脚を組み替え、冷めた色の瞳を細めて尊大に言い放った。


「で、きみ。俺のかわいい妹を誘拐されたって? どのツラ下げて兄貴の前に立てるのか、俺には理解しかねるね」


異国の王族同士の最初の接触にしては飛び抜けて礼を欠いたものではあったが、エドワードがこれに関して言い訳をする余地はないのだ。

しかもラナにベタ惚れの彼なので、とてもではないが、義理の兄に対して下手に出ないわけにもいかなかった。

ナバの王太子がこれについて何度も謝罪をし、必ずラナを取り戻すことを誓うと、バズは憎々しげにぼやいた。


「だから俺は妹をどこの馬の骨とも知れない異国の男に嫁がせるなんて反対だったんだ。いきなり嫁を攫われた第一印象最悪の男を信頼しろって? 俺、ラナを助け出してそのまま連れて帰ろうかな」

「いえ、ラナは俺の妻です」


エドワードがつい反射的に言い返してしまったので、バズは腹を立てて妹の旦那に飛びかかってきた。

端正な顔つきをした線の細い王子だと思ったが、かなり俊敏な動きを見せる。

ライアンが慌てて止めに入ったので、エドワードは殴られずに済んだ。


「口を慎んでください、殿下。お前マジ評価最低なのはどうしょうもないですよ」


側近に低い声で咎められ、エドワードは自制しようと努める。


「まったく! おい、聞いたか、ヴィート! 『ラナは俺の妻です』だと? 信じられない、ラナはお前のものじゃない!」


憤慨して地団駄を踏む姿は、かわいらしさは格段に違えど、さすがに血を分けた兄妹なのだと、エドワードは他人事のように思った。
< 161 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop