王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

ヴィートが怒りに青筋を立てるバズを宥めるように言う。


「落ち着いてください、王子殿下。今はラナ様のためにも一刻を争うとき。そのような言い合いをしている場合ではございません。もしもナバの王太子殿がラナ様を救えないような輩なれば、このヴィートが黙っていないというもの。世界最強のスタニスラバ海軍を引き連れ、必ずや……おや、失礼」


そんなこんなでやり取りはなかなか進まなかったが、行動を起こしてからは速かった。

彼らはバルバーニ帝国の近海をうろついている海賊船を片っ端から取り調べ、4隻目で南の大陸と帝国との間で行われている麻薬の密輸に関わっている者たちを捕らえた。

その船に乗っていた海賊を縛り上げたエドワードは当初の計画通り、アルベルト皇帝の直筆サインが入った、麻薬の取引に関する証明書を入手した。

今まで軍艦を持たぬがためになかなかこうすることができなかったナバだが、これで彼らの手の中には、皇帝と海賊の取引の一切の証拠があることになる。

取引相手である海賊は特別アルベルトに忠誠を誓っているわけでもなかったので、戦場での鬼神のような姿のエドワードを目にし、早々に降参した。

皇帝を裏切ることになる彼らの身の安全を保証される代わりに、ナバの王太子への絶対服従を誓う。


「我が国としても、このところオーロ海を騒がせている海賊船をそろそろ取り締まろうという話が持ち上がっていたところだったのです」


決して微笑まぬ堅物のヴィートだが、ナバの王立騎士団の一等騎士たちの活躍には満足してくれたらしい。
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