王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

「お前、随分いい腕してるな。ラナは剣術にも興味を持ってたから、教えてやったら喜ぶぜ」


バズがエドワードの肩を組んで目付役には聞こえぬようひっそりと囁いたので、ラナのお転婆はきっとこの兄の影響なのだと、エドワードは心の中で合点した。




■4■


2本の剣が音を立てて交差し、舞踏の間に高貴な女性たちの悲鳴が響いた。

仮面を取り去った男は向けられた剣を巧みに払い、第一皇子のフベルトスと距離を取る。

しかし彼らは既に大勢のバルバーニ兵士に囲まれていた。

青年は左腕にしっかりと姫君を抱え、右手に騎士の剣を持って、敵陣に囲まれたまま毅然として言い放つ。


「我が名はエドワード・バロン、ナバ王国アルレオラ大公。ラナ・カリムルーは私の花嫁だ!」


ホールにひしめき端に避難している貴族たちの間でどよめきが起こった。

たしかにナバの火竜と呼ばれる隣国の王太子は、ブルネットの髪に翡翠色の目を持つ精悍な騎士だという噂だが、ナバとバルバーニは長年犬猿の仲であるはずだ。

なぜそのエディ・バロンが帝国の仮面舞踏会にいるのだろう。

フベルトスが彼からラナを譲り受けたのだと思っていた者たちは、エドワードが名乗るのを聞くと、興味津々で陸軍兵士たちが作る輪の外側に集まってきた。

元より彼らとて若い頃は戦士として活躍した男がほとんどで、女たちの息子は戦場でナバの火竜と剣を交えている。

その人垣を割り、円の中心に進み出てくる男がいた。

皇帝アルベルトである。
< 163 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop