王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです




■2■


寝室に茜色の夕日が射し込み始めた頃、一日眠り続けたラナはふと目を開けた。

視界いっぱいに白い布が広がって、柔らかいベッドに沈む身体には適度な重さが感じられたので、最初は自分がシーツに包まって眠っていたのだと思った。

とろけるような安心感に、もっとシーツを引き寄せようと手を伸ばす。

すると白い布が勝手に身じろぎしたので、まだ寝ぼけていたラナはびっくりして目を見開いた。

ゆっくりと顔を上げると、規則正しく上下する胸と、男性らしい喉元、扇型に広がった長い睫毛の影が落ちる頬骨、それから無造作に乱れたブルネットの髪が見えた。

どうやらシーツだと思った白い布はエドワードの着ているシャツで、身体に纏いつくものは彼の腕であるらしい。

(これはどういう状況かしら)

いまいち意識のはっきりしないラナは、エドワードに抱きしめられて眠る理由が理解できない。

部屋にはふたりの他に人はおらず、心地のいい静寂に包まれていて、窓から忍び込む夕焼けの色があたたかく辺りを染めている。

とにかくこのままでは壊れかけのおもちゃのようにぎこちない心臓が止まってしまうのではないかとラナは思ったので、目の前の見た目より逞しい身体から距離をとることにした。

ラナがこっそり後退りを始めると、彼女の腰に回された腕がセンサーのようにピクリと反応する。

その腕がそのままラナの身体をグッと引き寄せたので、彼女は結局自分を抱きしめる男ともっと密着することになってしまった。

ラナが混乱してぐるぐると目を回していると、腕の主が気配に気づいて目を覚ます。
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