キミが好きなのは俺
健一さんはそれだけを言うと、チケットを持っていない私の右手を握って
ゲートに向かって歩き出した。
あ・・・健一さん。
私の手・・・。
健一さんは、何事もないかのように、ゲートまで私を連れて歩き
係員の人にチケットを見せる。
私も、健一さんと右手を繋いだまま、係員の人に促されるままチケットを見せた。
係員の人によるチケットの確認が済んでも
健一さんは私の手を離すことなく繋いだままで
私は健一さんに連れられるように
オレンジ色の間接照明が照らす
プラネタリウムのドームまで続く薄暗い道を奥へと進んでいく。
だからと言って、健一さんは私の歩くスピードに合わせてゆっくり歩いてくれたから
私がこけたりつまづいたりすることは無くって。
私の手よりも大きく、少し温かい健一さんの手に、私の心臓はドキドキした。
そして、結局、プラネタリウムのドームに入るまで
私も健一さんも、一言も話さなかった。
というよりも、とても静かで
話せるような雰囲気ではなかったというのもあるんだけど。