キミが好きなのは俺
「陽菜っ。」
ガラッと教室の前の扉が開く。
肩で息をしながら入ってきた亜紀ちゃんは、すごく心配そうな顔をしていた。
「亜紀ちゃん…。」
亜紀ちゃんの姿を見て
私のためにここまで走ってきてくれたことを悟り、心が温かくなる。
優くんのことで悲しいのか
亜紀ちゃんのことで嬉しいのか
よく分からない涙が出た。
「陽菜…大丈夫?」
亜紀ちゃんは私の隣の席に座った。
「大丈夫・・・大丈夫…じゃない。」
私は下を向き、涙を拭きながらかすれた声で答えた。
正直、よく分からない。
大丈夫って言いたいけれど
大丈夫って言ったら、急に不安とか悲しさとかが襲ってくる。
「陽菜…ごめん私、次小テストがあって…。
3コマ始まるまでなら、ここに居られるから。」
私は下を向いていて
亜紀ちゃんの表情までは分からないけれど
声からして、すごく申し訳なさそうに、困った顔をしていると思う。
「ううん…ありがとう。」
ごめんね亜紀ちゃん。
迷惑かけてごめんね。