キミが好きなのは俺
これ以上健一さんに心配されてしまうと



せっかく無理やり涙を拭いて少し元気が出たのに



・・・また泣いてしまう。




違う優しさに触れて、また悲しくなってしまう。





だから私は、健一さんが最後まで言い切る前に、断りを入れた。





すると、健一さんは少し悲しそうな顔をしてから


優しく微笑んで



「そっか。しつこくごめんね。」



少し切なそうに、そう言った。




「そんなことないですっ。



 こちらこそ、ごめんなさい。」





健一さんの優しさを素直に受け止めることができなくて



気しか遣わせてなくて…。




私は申し訳なくて、健一さんに頭を下げた。





「頭、あげて?」



健一さんは私の肩を優しくふわりと掴んで、私の体を起こした。




「何かあったら、いつでも連絡してね?

 これでも一応、先輩だから。」



健一さんは、少し切なさを残した表情で、ニコッと笑う。





「はい…ありがとうございます。」




健一さんが優しすぎて




私はなんだか、健一さんの目を見てお礼を言うことができなかった。




「無理しちゃだめだよ。

 気を付けて帰りなね。」




健一さんはそう言うと




私の頭を優しくぽんぽんっとして、正面門とは反対の方向へ歩いていった。
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