キミが好きなのは俺
9.二人の先輩
次の日。
今日は1週間の中で一番多く授業を取っている日にもかかわらず
気づけば最後の授業も終わっており、部活に行く時間になっていた。
今日は
いつ移動していたのか
授業はどんな内容だったのか
お昼は何を食べたのか…
いや、そもそもお昼を食べたのか…。
録画するのを忘れてしまったビデオカメラのように
思い返してみても何も映像として浮かんでくることはなく、何一つ思い出せなかった。
すでに桜は散ってしまい
若緑の葉っぱを身にまとった並木道を通りながら、体育館へと向かう。
数歩先の地面を見つめながら歩いていると
風が、並木道の間をさーっと吹き抜け
カサカサと葉っぱがこすれあう音が聞こえる。
私とは異なったリズムの足音も、いくつか聞こえる。
そっか・・・みんなもこれから部活なのか…。
何部かな…バスケ部かな、バレーボール部かな、それともバドミントン部かな。
いつもなら気にならない音が耳に届き、いつもなら考えないことが頭に浮かぶ。
だけど、それが記憶として脳にとどまり続けるわけではなく
聞こえては消えていき
考えては消えていき…
その場限りで現れ、すぐにフェードアウトしていく。