キミが好きなのは俺
「よっ。」
・・・誰かが挨拶してる。
なんだか軽い挨拶だなぁ。
スッと横に感じる人の気配。
私よりも身長が高い人なのかな…
歩幅が広いのか、地面を蹴る音の間隔は私よりゆっくりだけれど
その音は前にずれることも後ろにずれることもなく
私の真横から聞こえる。
誰かが私の横に並んで、歩いている。
「…陽菜。」
私の左側から、私の名前を呼ぶ声が届いてくる。
あ、今…私名前呼ばれたみたい。
私に何か用事でもあるのかな。
「おーい。陽菜。」
――ドンッ
「いたっ…。すみません。」
「うぉっ。いや、オレこそごめん。
…おいっ、大丈夫か?」
私の視界いっぱいに、黒いシャツが映りこんだ。
どうやら、私は目の前にいる黒いシャツを着た人に
そのままおでこをぶつけてしまったようだった。
さっきまで私の左横にあった人の気配が無くなっているから
きっと、その人が私の前に回り込んできたのだろう…。