キミが好きなのは俺

試合以外で見たことのないかずさんの様子に



私は最後までかずさんの目を見て答えることができず、視線を外した。




「ちょっとどころじゃねーだろ。」



「・・・えっ。」




「呼びかけにも、名前呼んでも、隣歩いてても
　何も反応がない。
　
　俺にぶつかった後もだ。
　すぐ立ち去ろうとしてた。」



「・・・。」



「何があった…？」




何があった…



かずさんが今放ったばかりのその言葉が、頭の中でこだまする。





かずさんの顔を見れば



真剣な表情で私の瞳の奥を見つめていて




私の心を透視しているんじゃないかと感じてしまう。




私はそれに耐えられなくて、視線を下に落とした。




「・・・。」



沈黙する私と




私の肩を掴んだままずっと私を見つめるかずさんの間に





スーッと風が吹き抜ける。