キミが好きなのは俺
「話せないほど…辛いことでもあったか?」
肩を掴む力を少し緩めてくれたかずさんは、落ち着いた声で私に話しかける。
私の耳に届くかずさんの声は
まるで私の心に直接問いかけているみたいに
とても真っ直ぐ心に響くものだった。
「何も・・・考えられないんです。」
私は、今の自分を素直にかずさんに伝えた。
心臓がドクンドクンと波打ち、涙が込みあげてきそうになる。
そして、私は一度深呼吸をした。
「辛いことがあったというより…
自分でした選択に、苦しくて、苦しくて…。
そしたら、なんか・・・
何にも考えることができなくなっちゃって…。」
私はかずさんに向かって話しているはずなのに
視点が一つに定まらず、目が勝手に泳いでしまう。
上手く顔の筋肉も動かせなくて
笑うことはもちろん
大きく口を開けることもできない。
本当に、無に近い状態だったと思う。
「陽菜。今日はもう帰れ。」