理由は聞かない
「好きな人が、できたんだ。」

ごめんと言いかけた陽太の口を、私がふさいだ。

「誰かが…誰が悪いんじゃないよ。好きになったら、それまでだから。」

そう、一度動き出した気持ちは、簡単には止められない。

「ありがとう。今まで。」
「ごめ…」
「謝らないで。」
「…うん。芽衣子、ありがとう。」

ダッフルコートの背中が見えなくなって、目をぎゅっとつぶった。

あれから約3ヶ月。

気を抜くと、陽太を思い出していた。去年の同じ頃に行っていた場所とか、よく行っていたうどん屋のカレーうどんとか、思い出す度に、じわじわと胸の奥を削がれるような気持ちになった。

4年半、長くもないが短くもないんだな。

そして待ち合わせをしたコンビニまでの15分は、ふと呼び戻された記憶を押し込めるには、短くもなく長くもなかった。
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