理由は聞かない
駐車場は、いつものこの時間にしては、わりかし混みあっていた。

ふと、昼間のお客様の会話を思い出した。

「ホタル、そろそろ見れるんよ、宝池のとこ。」

このコンビニが、その近くだったことを、着いてから思い出した。コンビニ店主は毎年、気前よく駐車場を貸しているとか言ってたな。

ホタルか…陽太と行ったのは、おととしだったかな…

元気なんて、出ないよ、きっと。

先に着いていた久保さんは、いつもより柔らかい表情をしていた。なんでだかは、知らないけど、まあ、プライベートだからだろうかな。

「行きますか。」

靴下も一緒にしておけば、と、今さらながら少し後悔した。ストッキングにスニーカーだと靴擦れしそうな気もする。事務服にスニーカーという、ちぐはぐな格好だし、あまり好きじゃない職場の人間と、その人のよく分からないお気遣い。さっさと解放されたい気持ちでいっぱいになった。
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