理由は聞かない

｢ごめん、こんなとこで、はぐれて迷子みたいなことにさせたくないから。｣

なんだか、気持ちが急に楽になった。

｢一応、成人式越えた大人ですけど。｣

笑いながら答えたけど、久保さんはいたって真面目な回答を返してきた。

｢いや、えーと…年頃の…かわいい女性だから。｣

胸の奥が、少しざわついた。

そんな風に見られてたんだ。

｢かわいいですか…小賢しいとかじゃなく。｣

ぷっと、吹き出して、久保さんが笑ってくれたから、少し救われた気持ちになった。暗いと表情が見えなくて、でもつながる指から緊張と緩和を感じて、よく分からないけど、なんだかほっとする。