理由は聞かない
「似合うよ、その髪。」

ドキッとした。

「長いのも似合ってたし、いろいろ、結んだり、下ろしたりもよかったけど。」

改めて言われると、なぜか妙に緊張する。

「あ、ありがとう…ございます。」
「うん。」

久保さんは少し間を開けて、息を吐いてから、一言告げた。

「帰るか。明日も仕事だし。」
「はい。」

その後は、いつもの、少しムカつく久保さんと変わりないやり取りをして、車に向かった。

ただ、一つだけ変わったことも。

ムカつくけど、ちょっと優しい先輩の久保さんだ。
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