理由は聞かない
「彼氏の好み?」
「悪いですか?」
「いや、古風だなって。好みに合わせる方なんだなって。」
「放っといてくださいよ。」
少し間を開けてから出た言葉に、やたらドキッとしたっけ。
「俺はどっちも好きだし、井田さんはどっちも似合っているはずだから、長かろうが短かろうが、なんも言わねーだろーけどな。」
久保さん、髪切った理由も、陽太のことも、今日は聞いてこなかった。
それはたぶん、あの人なりの優しさなんだろうな。