理由は聞かない

顔つきが変わった理由

ホタルを見に行ってからも、日常は日常として変わらず、久保さんと私の関係も何も変わらず、山盛りの仕事の中で、時間はキッチリ流れていた。

梅雨も開けて、まぶしい日光と気だるい暑さが、疲れを増幅し、やる気を奪って行く。それでも前へ前へと、進めていくしかない。

木曜日の少しお客さまが切れた午後。

ふと見ると、FAXが届いていた。金融か共済か、車両入れ替えかな、と手に取ると、ひどいクセ字の事故受付だった。

ああ、もう少しマシな字で書いてくれないかな…

ほどなくして、書いた主からの電話が来た。

｢FAX見た？｣
｢もう少しマシな字で書いてください。｣

久保さんは、気持ちが先行しすぎる文字を書く。落ち着きがない字で仕事を投げてくる。