理由は聞かない
でも、その時だった。

「弘樹くん!」

久保さんを呼ぶ声の先に目をやって、ドキッとした。

「あれ?井田さんだ。」

声の主は、少しビックリしながら、私を見てそう言った。

「お、お疲れ様です。」

仕事でもないのに、何言ってるんだ、私。

そこには、いつもより少しキラキラ度が増した、同じ支店の人がいた。金融渉外の園田さんだった。

「おう、明日美!」

思考が一時停止した。

なんで、下の名前で呼びあってるんだろう。

よく見ると、二人とも、休日なのにカッチリした服だ。なんか…どこかに挨拶にでも行きそうな服だよな。


「…ださん…井田さん?」

久保さんに呼ばれて、はっとした。

「あ、えーと、すみません、また来週。」
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