理由は聞かない
まずは、陽太と別れたことを話して、黙っていたことを謝った。でもそのあとは、たくさん話し、たくさん笑った。お互いの仕事のこと、日常のこと、七海の彼氏のこと。薬剤師の彼氏とは、うまくいっているらしい。良かった。なんて話をした後だった。

「あのさ、やっぱり話してもいい?」

七海のまっすぐな視線が、切り出される内容を物語っていた。しばらく言葉を探したけど、見つからない。

それは、たぶん、心のどこかで、知りたい自分がいるからかもしれない。

「どうぞ」

心を決めて、そう返した。

七海はその日、1階のコンビニで飲み物を買おうとしたところで、落ち着きなく、うろたえた陽太を見つけてしまったそうだ。

「里中くんがものすごく動揺してたから、芽衣子に何かあったかと思った。」

すみません、別れたこと言ってなくて。

「そうしたらね…」

その日は、陽太の実家近くで、お互いの家族の顔合わせだったらしい。顔合わせが終わって、用事を済ませて、陽太の実家に寄って、新幹線で帰るという予定だったらしい。その途中での事故だった、ということだった。

「事故の相手さ、うちの支店の契約者さんだった。」
「ああ、それで知ってたのか。」
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