理由は聞かない
今日も粛々と、やることをひとつひとつ、こなした。電話も多くて、疲れたけれど、あと一日頑張れば休みだ。

よし、とりあえず終わった。

伸びをして、ため息をひとつついた。

端末の電源切断ボタンを押そうとしたちょうどその時、もう開かないだろう出入口が、ガチャリと開く音がした。

時計は7時少し前。外回りの人たちも、ほとんどが直帰か既に退社済みの時間だ。

「お疲れさまでーす」

チャラい挨拶で、いらっとした。やっと仕事が片付いて、さあ帰るかって時に来るなんて。

「お疲れさまです。」

私はその人に、心の内はバレないよう、努めて普通に挨拶した。
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