理由は聞かない
少し触れた手に、なぜかドキッとした。ゴツゴツしているけれど、男性にしてはきれいな手をしていて、毎度少しドッキリする。

「じゃ、お先に。」
「お疲れさまでした。野菜、ありがとうございました。」

軽く手を上げて、去っていく久保さんの背中を見送った。

薄いブルーのストライプのワイシャツ。

しゃべらなきゃ、それなりいい男なのにな。背は高いし、姿勢もキレイだし、ちょっとだけ朝ドラに出ていた俳優に似ている。

だけれども、仕事もそれなりに出来るけど、「井田さんなら、あのおばさんの対応、俺より上手い」だの、うまく丸め込まれながら、仕事を押し付けてきている気がする。それにたまに、あめ玉なめながら電話してくるわ、電話途中でお茶飲むわ、だらけすぎててムカッとする。

親しき仲にも礼儀ありなんて、久保さんには微塵もない。
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