呆れるほど恋してる。



「さすがに、今回は私も順ちゃんを見損なったわ。連絡不精な男って最低よね!」


洒落た居酒屋で三山がビールを飲み干しながら、眉を顰める。


彼がフランスに去ってから一度も連絡がないため、さすがのせりも順との関係は夢物語だったのではないかと思い始める今日この頃だった。


美沙に大丈夫と励ましている場合ではない。


「まあ、でもいるよ。そういう男。私の友だちも彼氏が連絡しないからこの間ブチ切れたってさ」


菜子が枝豆を食べながら肩をすくめる。


三山も順とは連絡が取れていないらしい。


その代わり、海外のアートニュースでは順の話題がチラホラとのぼっていた。


「まあ、女にうつつを抜かさず努力しているのは同じ男として尊敬はするけど、待っている女の気持ちも考えてみなさいよ。ねえ、せりちゃん」


「……まあ、そんなに怒らなくても」


代わりに三山が怒ってくれるので、気持ち的には去年と比較すると楽になっていた。


「帰ってきたら、ビンタの一つでもかましてやりなさいよ!ねえ、菜子ちゃん」


「それは賛成。ビンタくらいは甘んじて受けるべきだね」


なぜか、三山と菜子は近頃意気投合している。


「……ビンタはしないけど」


「それは甘いわよ。これだけ待たせてるんだから。他に男が出来ても文句は言えないわよ。アラサー女の時間は短いんだから」


「うわあ。それ身に染みるから、やめてよ」


ケラケラと笑いながら言う菜子に「本当それ。やめてくださいよ、三山さん」とせりも笑う。


「30過ぎてからは早いんだからね、あんたたち」


「三山さんって時々お母さんみたいだよね」


菜子の言葉にせりも頷いた。


「確かに」


「あら、やーね。今頃気が付いたの?」


ふざける三山。


みんなで顔を見合わせて笑う。


しんどい時に一緒にいてくれる仲間がいることを、せりは心から感謝していた。


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