呆れるほど恋してる。
家に帰る。
部屋は綺麗に片づけた。
忙しいと言えども、部屋が荒れてたら気持ちも落ち込んでいく。
本棚に並べた雑誌を取り出して、せりは静かにそれをパラパラとめくった。
順にもらったワンピースを着た自分が受けた雑誌インタビューはもう一年も前の話だ。
今は三山とのコラボ期間も終了して、セリーヌ・ヴィーナス原宿通り店舗は多くの店舗と同じような店舗になってしまった。
売上は何とか上位をキープといった感じだ。
店長の仕事をしながら、マネージャーの仕事もスタートして忙しさに拍車がかっている。
三山効果もあってか、店舗がオープンしてからの1か月は驚異的な売上を叩き上げた。
ニュースでも取り上げられて、せりの載った美人辞典も売り切れ店続出だったらしい。
更には、泣きわめいた芽生ちゃんは有名な読者モデルだったらしく、セリーヌ・ヴィーナスのことをSNSで紹介してくれたことで更にセリーヌ・ヴィーナス現象は加速したのだった。
あの時、焼肉をご馳走しておいて本当によかったと言うと「ふざけないでくださいよ」と芽生に苦笑いをされた。
彼女も順が残してくれた一つだった。
彼女の勧める物はヒットすることが多いらしく、ぜひセリーヌ・ヴィーナスもと言ってくれていたようである。
全く知らなかった。
時の人となったあの時のことを思い出す。
今度スタイル本を出すことも決定し、キャリアとしてもまずまずといったところだ。
一年前の自分からは想像もつかないような変化だった。
毎日が忙しかった。
考えている余裕もないほどに。
夢のような日々だったと思いながら、物思いにふけっているとピンポーンとインターホンのなる音がした。