呆れるほど恋してる。
玄関を開けると、宅急便のお兄さんが「サインください」と少しばかりやる気のなさそうな声で言った。
「あ、はい」
一旦部屋の中に戻って、ボールペンを持ってくる。
小さな小包の上にある用紙に自分の苗字を記載すると、お兄さんは「失礼します」と足早に去って行った。
誰からだろう。
そんな風に思いながら差出人の名前を見て、せりは慌てて部屋の中に入った。
そして机の上に置いてあるローテーブルの上にその小堤を置き、ペーパーナイフで小さな段ボールを止めてあるガムテープに切れ目を入れた。
送り主の名前はJUN NAKATA。
筆記体でそう書いてあった。
スマートフォンという便利な道具がある中でなんて古風な連絡手段をと思いつつも、彼女は慌てた様子でその中身を確認した。
「……バカぁ」
涙を流す。
そこに入っていたのは、日本で開催される順の個展の招待状が1枚と写真が1枚。
写真の裏には「指輪のサイズ、そろそろ教えて」とだけ書いてあった。
こんだけ待たせて、こんなに待たせてその一言は反則だ。
待っていると思っていること自体に腹が立つ。
「ばか……ばか。順さんのばか……」
小さな声で呟く。
なんてずるい男なのだろう。
それでも好きだ。
彼に会いたい。
そんな風に思ってしまう自分がいた。